タイの車掌

タイにも長距離列車が走っている。しかし高速長距離バスの方が、安く、速く、サービスがよいため、なかなか利用する機会がない。特に、私がいるのは、東北地方のコンケン。一応、バンコクーノンカーイ間を走る列車もあるのだが、なんせコンケン発着がめちゃめちゃ早く、不便きわまりない。それでもたまに、バスではなく列車に乗りたい!と思って乗ることもある。そして乗るたびに後悔するのだ。

南部のリゾート地フアヒンに行った時もそうだった。東北地方の田舎にこもっていると、たまに「海が見たい!」と強く思うことがある。そして突然一人で海を見に行くのだ。フアヒンは、一番最初タイに訪れた時に行った、海のリゾート地。バンコクからバスで3時間ほどの近場にある比較的小さな保養地だ。突然フアヒンに行き、タイ人のおねえちゃんたちがヨーロッパ人の太って醜い男たちとたむろしているようなバーで、タイ語がわからないふりをしつつ、周りの会話に耳を傾ける。これ、私にとってタイの楽しみ方の一つ。

一泊して、さあ、またバンコクに向けて帰ろうとしたとき、ふと列車に乗りたくなった。駅で時間を確かめると、バスとさほど所要時間は変わらない。今から乗れば、昼過ぎにはバンコクに着く。ならばと、バスで帰るのをやめて、列車に乗り込んだ。

もちろん普通座席。木の堅い椅子。冷房なんてない。それでも外の景色を眺め、窓からの風を顔に受けていると、ああ、やっぱり気持ちいいなと感じる。バス路線と違い、列車が走るのは、もっと緑が残っている郊外である。走る速度だって、それほど早くないから、窓を開けたままでもいいのだ。隣のおじさんが話しかけてくるが、適当にあしらいつつ、列車の旅を満喫しようとしていた。

ところがふと気づくと、やたらに列車がジャンクションで止まるではないか。タイの線路は単線だから、しかたないかと思っていたが、それにしても走る速度までがあまりに遅い。<どうしたのだろう・・・>そのうちに乗客たちも騒ぎ始めた。この調子では、何時間かけてもバンコクに着きそうにない。車内放送によると、機械の故障のため、徐行運転しているとのこと。とりあえずは動いている。

昼を過ぎ、午後になり、夕方になった。まだバンコクに着かない。多くの乗客は、今日中に違う列車に乗り換えて、別の地方へと行こうとする人たち。たまに回ってくる車掌に、飛びかからんばかりに文句を言っている。

「いったい、いつになったらバンコクに着くんだ。自分にだって、これから先の仕事の都合っていうのがあるんだ。どうしてくれるんだ!」

車掌が答える。
「列車って言うのは、(競)馬と同じ。走って欲しいと思うときに走ってくれないんだ」
その答えを聞いた乗客は、黙ってしまった。そう、車掌に文句を言っても、列車が速く走るわけではない。これが日本なら、補償問題やら殴り合いのけんかやらで、大変なことになるんだろうな。さすがタイ人と思いつつ、私はあきらめの境地に達した。

結局その日、バンコクにたどり着いたのは、深夜だった。
それでも着いただけましだと思わねば。マリコ
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by chachamylove2003 | 2005-05-19 02:11 | タイ諸々