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タイのお役所と僧侶

タイの宗教局に行った時のこと、いつものことながら資料をコピーしてもらっている間、クーラーの効いた部屋の片隅で座って待っていた。そばの机にいた公務員の女性が私に声をかけてきた。

「あなた、仏教に興味があるの?」
「はい」
「ちょうどよかったわ。今、とても素晴らしいお坊さんがいらっしゃってるのよ。紹介してあげるわ。コピーが終わったら、届けてもらうから大丈夫よ」

そう言われると、断る理由は何もない。言われるまま、別の部屋へと彼女の後を付いて行った。
クーラーの効いた会議室に、何人かの人に囲まれて僧侶がいた。
私を連れてきた女性は、僧侶に私を紹介してくれた。

「仏教に興味があるという日本人を連れてきました」

年の頃は40歳代だろうか。色白で皮膚がテカテカした僧侶は、にこやかに私を招いた。
「タイ語はわかるか?そうか。パラン・チット(直訳すれば、心の力だが、気功の『気』にあたる)はわかるか?」

取り巻きの中の女性が数人、口々に説明してくれる。
「このお方にはね、すばらしい能力があるの。修行によって究極の域に到達し、私達に瞑想法を教えてくださるのよ。彼の力を見たい?」

なんだか、嫌—な雰囲気になってきたのを感じ、この場の空気を変えようと僧侶にインタビューを試みた。
「生まれはどちらですか?いつ、出家なさったのですか?」
取り巻きたちは、すぐに薄っぺらいパンフレットを何冊も私に渡してくれた。
「そういうことは、ここに書いてあるから。彼の力を見たい?」

今度は僧侶のそばに座らされた。
「こうやって、手を挙げなさい」
彼は、私の掌に彼の掌を近づけてきた。
「感じるか?感じるか?この『気』の力を感じるか?」
これは、気功?それとも真光?私は、こういうことに関して非常に鈍いのだ。
「いいえ、何も感じません」
僧侶はがっかりした表情で、いろいろな角度から手を私にかざした。

「感じるか?感じるか?」
「いいえ、何も」

何度も繰り返しているうちに、僧侶の機嫌があきらかに悪くなってきた。
取り巻きたちが私にいろいろな説明をしてくれる。彼が、様々な悩みを解決してくれること、病気まで治してくれること、私達も彼の指導によって『気』を操れるようになること、などなど。
「何か悩みはない?このお方が解決してくれるわよ。今、一番辛いことは何?」と、先ほどの女性たちが優しく聞いてくれる。
「悩み?うーん。論文が書けないことかな、、、」

僧侶は取り巻きたちに言った。「日本人には仏教が理解できないらしい。そもそも日本の僧侶は酒は飲むし、、、」タイ人がよく言う日本論が始まった。

「コピーを取りに行って帰ります」
この場は去った方がいいと考えた私は、唐突に帰ることを決めた。
そして自分ができる限りの最高の三礼(頭を床に三回つける礼)を注意深く行った。寺によく行くので、三礼は慣れたもの。
僧侶と取り巻きたちが絶賛した。
「三礼が、きれい。タイ人よりきれい」
とりあえず場の嫌—な空気は和み、私も平和に帰ることができた。マリコ

by chachamylove2003 | 2007-06-30 03:42 | タイ諸々