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タイの歴史アニメ・カーン・クルアイKhan Kluay

カーン・クルアイKhan Kluay
2006年Kantana Animation

毎年恒例のタイフェスティバルが、近所で開催されていたので行った。それで映画を見てきた。ディズニー映画と同じようなタッチの画像だし、監督もアメリカン人だから、よくある子供向きのアニメーションだと思い、期待しないで見たけど、結構よかった。

カーン・クルアイは、子象の名前。強いカーン・クルアイ(バナナの幹)のような子になるようにとつけられた。子象がまだ見ぬお父さん象を探しに行く冒険もの。でもディズニーと違う点は、この映画が最近タイで流行の歴史ナショナリズム物である点。

時代はアユタヤ時代。ビルマ軍との度重なる戦いで、重要な役割を果たすのが象。王を背に乗せ、勇敢に戦う強い象だったカーン・クルアイの父は、戦いですでに亡くなっていた。幼少の頃、ビルマ軍の人質だった、後のナレースワン王は、アユタヤに戻り、カーン・クルアイを自らの象として選ぶ。ビルマとの戦いで、カーン・クルアイは父の敵をとり、ナレースワン王は勝利する。

これまでもBang Rajan(2000)Suriyothai(2001)など、ビルマとの戦争物の映画が大ヒットし、映画の作り方も世界市場を意識した質の高い物が最近続いている。
しかしそれにしてもいつもアユタヤ時代。そしてビルマとの戦争。これがタイの大河ドラマというところ。
現在のバンコク王朝についての映画は作りにくい。「王様と私」のようにラーマ5世を主人公としたものは、タイでは上映禁止されている。歴史的事実と合わず、タイの王朝を侮辱する役作りだというのだ。だからバンコク王朝以降の、王族に関するすべてのもの(書物、研究、映画など)はなかなか出てこない。不敬罪があるため、タイ人にとって扱うのは非常に難しい。ラーマ6世はゲイだ、なんて言ったら捕まってしまう。

今年はラーマ9世在位60周年記念の年。日本からも天皇が祝いの儀に参加した。多くの人びとが、国王への尊敬の念を示そうと、書物、雑誌、記念本、Tシャツなどが数多く販売されているが、ラーマ9世を人間的に書いた、西洋人の手による個人史もタイでは発刊禁止。
だからか、、、ナレースワン王の時代にまでさかのぼる。

ちなみにアニメに出てきたナレースワン王には、いろいろな伝説が語られている。ビルマ軍との戦いの前に、雲が9輪の形をしていた(縁起がいい)とか、毎朝護呪経を唱えて勝利祈願していたから勝利したとか。そして彼が編纂したと言われる護呪経を今も多くの人びとが、自宅や寺院で唱えている。

それにしてもタイの子供は、こういう映画を見て育つのだ。タイの歴史はアユタヤから始まり、ビルマとの戦いで勝利したところから始まる。その頃のビルマとの戦いって、私から見れば、関ヶ原の戦いみたいなもの。小さなクニと小さなクニの争い。

日本の歴史は、いつから始まったと思えばいいのだろうか。日本の歴史のほとんどは、現在の日本国内の争いごとの歴史。朝鮮出兵だけが例外か。北海道も沖縄も、今の領域から見れば、日本国になってしまっているから。

大陸と島国の大きな違いがここにある。

by chachamylove2003 | 2006-09-18 01:05 | タイ映画