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バック・オンの話

90年代前半、初めて東北タイの農村で定着調査なるものを行い、それ以降タイに行くときは同じ村の同じ家に泊まり続けている。時が10年以上も過ぎると、子供は大人になり、年寄りは亡くなり、家族や村の様子もかなり変わってくる。

2008年の八月に久しぶりに懐かしい人々を訪ねた。いつものようにメー・ヨンの家に泊まらせてもらった。彼女には2人の息子がいた。この前会った時(7年ほど前?)、下の子は小学5年生だった。やんちゃで可愛い男の子バック・オンは、恥ずかしがり屋であまり私に近づこうとはしなかった。

小学校と言えば、タイでは小学4年生ぐらいからアルファベットのABCを習い始める。かつて義務教育が初等教育の4年、その後6年までで、農村ではそれ以上教育を受ける人が少なかった。そのまま働きだし、全くABCがわからないようでは、日常生活に支障を来す。だから簡単な英語を小学校の高学年で学ぶのだ。

英語を習い始めたバック・オンは、「How do you do?」を呪文のように繰り返していた。面白そうなので、私は彼の英語の教科書を手にとってみてみた。現在形のみで会話を中心にした科目だった。絵が描いてあり、結構楽しそう。例えば、猫の絵(There is a cat)、猫のお腹の中に魚の絵(There is a fish in a cat)?これは猫が魚を食べたということか、、、。

次のページには、男が2人、バスに乗り込もうとしている絵。1人の男の手には拳銃(A man has a gun)、もう1人の男の手には鞄(A man has a bag)、彼らはバスに乗る(They get into a bus)、そこには2人の女性の乗客。彼女たちに男は言うGive me your ring!
おいおい、強盗か?
この章の目的は、giveの使い方の二つの構文give ○○to △△とgive △△○○について学ぶことだった。それにしても、例文が強盗、、、とは。

時は流れて、現在のバック・オン。高校生であるはずなのに、家にいない。どこへいったのだろうか。メー・ヨンは言いにくそうに彼はバンコクで働いていると告げた。どうして高校をやめたのか聞いてみた。

地元の高校に入ってから、彼は悪い仲間と徒党を組んで、別の村の高校生グループと敵対するようになった。あるとき、誰かの拳銃を彼は本当に発砲してしまい、けが人はなかったものの、彼は鑑別所(?未成年だったので)に4ヶ月留まり、その後敵対する若者たちの報復が怖くて村に帰れなくなった。もちろん高校も退学になった。

私が彼を初めて見たのは3歳ぐらいの時。メー・ヨンの夫が海外に働きに出ていて不在だったため、お母さんにずっとくっついて離れない甘えん坊だったバック・オン。大きくなってからは、何でも一人でこなせる利発な子だったので、家族や親戚のなかでも人気者だった。私もこの子のことが大好きだった。

警察に捕まった時、お父さんはまた海外に出ていて家にいなかった。メー・ヨンは毎日ため息ばかり。「どう育てたらよかったのか。私にはわからない。」

私もため息。はあ、これじゃあ、あの英語の教科書と一緒じゃないか。拳銃が教科書に出てくるほど身近にある国。弾が誰にも当たらなくてよかった。そう言うしかない。時の流れが人を変えるように、また彼を取り巻く情況も変わるだろう。彼自身ももう少し大人になることを祈って、合掌。マリコ
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by chachamylove2003 | 2008-09-08 00:40 | 東北タイ