<   2007年 06月 ( 2 )   > この月の画像一覧

タイのお役所と僧侶

タイの宗教局に行った時のこと、いつものことながら資料をコピーしてもらっている間、クーラーの効いた部屋の片隅で座って待っていた。そばの机にいた公務員の女性が私に声をかけてきた。

「あなた、仏教に興味があるの?」
「はい」
「ちょうどよかったわ。今、とても素晴らしいお坊さんがいらっしゃってるのよ。紹介してあげるわ。コピーが終わったら、届けてもらうから大丈夫よ」

そう言われると、断る理由は何もない。言われるまま、別の部屋へと彼女の後を付いて行った。
クーラーの効いた会議室に、何人かの人に囲まれて僧侶がいた。
私を連れてきた女性は、僧侶に私を紹介してくれた。

「仏教に興味があるという日本人を連れてきました」

年の頃は40歳代だろうか。色白で皮膚がテカテカした僧侶は、にこやかに私を招いた。
「タイ語はわかるか?そうか。パラン・チット(直訳すれば、心の力だが、気功の『気』にあたる)はわかるか?」

取り巻きの中の女性が数人、口々に説明してくれる。
「このお方にはね、すばらしい能力があるの。修行によって究極の域に到達し、私達に瞑想法を教えてくださるのよ。彼の力を見たい?」

なんだか、嫌—な雰囲気になってきたのを感じ、この場の空気を変えようと僧侶にインタビューを試みた。
「生まれはどちらですか?いつ、出家なさったのですか?」
取り巻きたちは、すぐに薄っぺらいパンフレットを何冊も私に渡してくれた。
「そういうことは、ここに書いてあるから。彼の力を見たい?」

今度は僧侶のそばに座らされた。
「こうやって、手を挙げなさい」
彼は、私の掌に彼の掌を近づけてきた。
「感じるか?感じるか?この『気』の力を感じるか?」
これは、気功?それとも真光?私は、こういうことに関して非常に鈍いのだ。
「いいえ、何も感じません」
僧侶はがっかりした表情で、いろいろな角度から手を私にかざした。

「感じるか?感じるか?」
「いいえ、何も」

何度も繰り返しているうちに、僧侶の機嫌があきらかに悪くなってきた。
取り巻きたちが私にいろいろな説明をしてくれる。彼が、様々な悩みを解決してくれること、病気まで治してくれること、私達も彼の指導によって『気』を操れるようになること、などなど。
「何か悩みはない?このお方が解決してくれるわよ。今、一番辛いことは何?」と、先ほどの女性たちが優しく聞いてくれる。
「悩み?うーん。論文が書けないことかな、、、」

僧侶は取り巻きたちに言った。「日本人には仏教が理解できないらしい。そもそも日本の僧侶は酒は飲むし、、、」タイ人がよく言う日本論が始まった。

「コピーを取りに行って帰ります」
この場は去った方がいいと考えた私は、唐突に帰ることを決めた。
そして自分ができる限りの最高の三礼(頭を床に三回つける礼)を注意深く行った。寺によく行くので、三礼は慣れたもの。
僧侶と取り巻きたちが絶賛した。
「三礼が、きれい。タイ人よりきれい」
とりあえず場の嫌—な空気は和み、私も平和に帰ることができた。マリコ
[PR]

by chachamylove2003 | 2007-06-30 03:42 | タイ諸々

海と旅行者

東北タイにいると、無性に海が見たい衝動に駆られることがある。

川はあるけど、あまり起伏がない大きな盆地。何万年か前までは海中だったらしいから、岩塩は取れるけど、海まで遠い。里山のような緑の起伏があるわけでもなく、だだっぴろーい平原が続く風景を毎日見ていると、自分がどこにいるのかわからなくなってしまう。

そんなとき、どこでもいいから、海を目指して南下する。ある時、バンコクからそれほど遠くない小さなリゾート地に行き、外国人用ゲストハウスに泊まり、久しぶりに旅行者気分を満喫した。

そこは20年前初めてタイ旅行をしたとき、訪れた場所である。ヨーロッパから日本へ帰国する途中、タイでストップオーバーした。ギリシャから乗ったパキスタン航空での旅はかなりハードなものだった。なぜならその飛行機の中で、アジア系女性は私とタイ人のおばさんの二人だけだったため、様々な国籍の男どもから、ひどい扱いを受けたからである。でもその結果、そのおばさんとは仲良くなって、なぜか彼女の実家に泊めてもらったのだから、人生、どこにでもいいことは転がっている。

その時、彼女の中学生の姪にお世話になった。一緒にビーチに遊びに行ったときのこと、私はさっと競泳用の水着を着て、海へ入ろうとしたが、姪は引き留めようとする。片言の英会話から推測すると、「タイ人女性が水着を着るなんてはしたない」と言っているようだ。それでも私は外国人観光客。目の前にきれいな海があるのに、見るだけなんて我慢できない。私がそれでも海に入ろうとすると、彼女もしぶしぶTシャツと短パンのまま付いてきた。なんだ、泳げるじゃないの。

ところが、その後がすごかった。泳いでいた若い男性たちに囲まれてしまった。その中の一人が、代表して私に近づき何か話す。でも私はタイ語がわからない。「Sorry, I don’t understand Thai」と言うと、「キャー!」と叫んで、離れていった。また違う男が寄ってくる。そして同じ会話を繰り返した。そのうち、一人の男がタイ人の姪っ子に話しかける。彼女は、ぶっきらぼうに何か話していた。その後、男が一人代表して、また私のところに泳いできた。今度は英語で話しかけた。
「日本人って本当?」

今やタイ人女性の露出度も高くなったが、その頃、確かに海に泳ぎにやってくるタイ人なんていなかった。ましてや、そこは外国人が多いリゾート地。私をタイ人女性、それも「進んでいる女性」、つまりこの場面では露骨に言うと売春婦に間違えたようだ。その後も、他の海岸で似たようなことがあった。旅行中だけ、西洋人観光客が雇った「現地人妻」のタイ人女性たちと一緒にいたときだった。

一人で酒を飲むより誰かとお喋りしながら楽しむ方がいい。そんな時、英語を少し話せて、レストランやゲストハウスで働くタイ人たちから露骨に嫌われている彼女たちと一緒に酒を飲んだり、泳ぎに行くことは楽しい。彼女たちだって、西洋人の男の相手しているより、普通に楽しみたいのだ。でも他のタイ人女性は彼女たちのことを相手にしない。

彼女たちと居るとき、本当にたくさんのタイ人男性たちが、からかいにやって来た。そして彼女たちは、私が日本人であることを理由に、男を追い払う(私の世話をしなければならないから)。私をタイ人売春婦と間違えた西洋人の男まで寄ってくるが、これまた彼女たちが追い払ってくれる(この日本人は商売してないよ)。だから私にとっては、とても居心地いいのだ。

でも現地語がわからない異邦人としての居心地の良さは、言葉がわかるようになるとともに、少しずつ失われてしまった。そのことは、また他の機会に書くとして、「現地妻」たちはどうなったのかなあ。元気でいればいいけれど、、、。そんなことを思いながら、海や人を見ながら、酒を飲むことをやめられません。

東北タイは、それなりに豊かな地だと思うけれど、海の青さだけは望んでも得ることができない。残念。マリコ
[PR]

by chachamylove2003 | 2007-06-24 23:14 | タイ諸々